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生物学的防除と有機生産に関するカリフォルニア会議
 (7月15〜17日 カリフォルニア大学バークレー校にて)

特許権により開発した企業や団体だけが独占することが可能なバイオ技術のために多額の研究資金を集めることに躍起になっている大学当局者の意向とは裏腹に、将来有望な研究が続出――バイオ燻蒸、益虫、寄生生物を抑制する土壌、害虫防除のための生息環境管理、被覆作物、堆肥など。

ドン・ロター博士

2004年8月3日配信: 生物学的防除と農業生態学に基づく手法、そして有機栽培は人類の食物全てを生産するのに必要な条件をほぼ満たすことができる、ということを示す証拠が年々増加しています。7月15日から17日までカリフォルニア大学バークレー校の国際会館で催された会議では、州全域にあるカリフォルニア大学各校で現在行われている生物学的害虫防除の研究と、有機生産の体系に関連した研究を取り上げていました。3日間の会期のうち2日間は生物学的防除全般に割り当てられ、3日目は広範囲にわたる有機農法の研究発表に充てられました。

サリナス・バレーの大手農産物企業の防虫管理専門家は、アブラムシが群がったロメインレタスの若葉の写真を見せて、語ります。「こんなのはもう気にしません。益虫が互角に張り合って、アブラムシを平らげてしまいますからね。」と。読者の皆さん、害虫管理に大変革が起こっていることをご理解頂けますね。
この会議では、研究資金の削減が厳しい制約になっていると、何人もの研究者から繰り返し話題が持ち上がりました。この分野の研究に携わる私たちには、とてつもなく大きな障害があるのです。それは、特許権により独占が可能なバイオ技術による食糧生産の方法に完全にのめり込んでしまった、主流派の科学学会、政界、マスコミです。私たちの利用する農業生態学に基づく技術のほとんどは、以下に多くの例を挙げていますが、独占権を主張できないものです。つまり、特許化することができないのです。ですから、民間企業は巨大な投資資本を抱えながらも、私たちへ資金を提供することには関心を示しません。一方、独占可能なバイオ技術の開発部門は、巨額の資金をここから得ていて、簡単に何百億ドルも集まってしまいます。困ったことに、私たちが期待できる公的資金である連邦政府の補助金は遥かに小額ですが、バイオ技術部門はそれすらも横取りしていて、農業研究費のうちおよそ85%を得ているのです。我々農業生態学者また生物学的防除の専門家は、支持者であり受益者である農家と消費者がいるだけで、文字通りパンくずを恵んでもらっているようなものなのです。

現在、連邦税などの公的資金は、既に民間企業に巨額の資金供給源を持つ独占可能なバイオ技術ではなく、独占権を主張できないような食糧生産手段に関する研究に充てるべきであるという認識が高まっています。結局は、農業生態学に基づいた方法が、将来食糧生産についての様々な規制が行われた時に、多くの解決策を提供することになるだろうと見込まれるからです。

会議で発表された内容を以下に概説します。その発表の多くは、独占権を主張できない農業手段について話す場合に、私が云わんとすることをうまく表現してくれる例です。会議では、カリフォルニア大学で成された、見応えのある量の有機関連の研究の数々について発表や説明があり、全体的に大変情報豊かでした。けれども、以下に議論されている研究成果にもかかわらず、研究者の大半が資金援助の面では削減の憂き目を見ています。

バイオ燻蒸 その1: カリフォルニア大学デービス校のクリシュナ・スバラオ氏は、アブラナ科植物を被覆作物に用いて病気を減らすという彼自身の手による研究を概説しました。一部の人たちにはバイオ燻蒸 [1] として知られているものです。ブロッコリは、バーティシリウム萎凋病 [2] の病原菌であるVerticillium dahliae には特に効果があります。彼の初期の頃の観察では、ある種の放線菌類と細菌の個体数が100倍〜1,000倍に増加しています。アブラナ科の作物にはそれぞれ特有のグルコシノレート [3] を含んでおり、ブロッコリはV. dahliaeに有効なのです。

バイオ燻蒸 その2; カリフォルニア大学共同公開講座ベンチュラ郡校 [4] のオレグ・ドゴビッシュ氏は、洋がらしと和がらしを被覆作物に使った「バイオ燻蒸」によって、ミカンネセンチュウと疫病菌(Phytophtora属菌) [5] による根腐病を90%減らす方法について説明しました。この場合、「バイオ燻蒸」と表現するのは相応しくないかもしれません。というのは、トリコデルマ属菌 [6] のような有益な糸状菌類が、からし菜を植えた土壌から格別に高い数値で検出されたとドゴビッシュ氏が指摘しているからです。燻蒸剤を使って土壌を燻蒸消毒する時は、こういうことは起こりません。サリナス・バレーでは、からし菜を被覆作物として使うのがもう当たり前になっています。

このように、からし菜は根腐れ病に対して圃場で実際に有効であることが認められていますが、その一方、雑草の発芽やバーティシリウム属菌に対して、際だった成果は現在認められていません。例えば、雑草抑制効果ですが、実験室レベルの研究では、からし菜が雑草の発芽を抑制する効果が顕著に認められるものの、圃場試験では特筆すべき結果が出ていません。また、バーティシリウム属菌に対しては、いとこに当たるブロッコリ(からし菜もブロッコリもアブラナ科です)が、この菌に対して抜群の効果を発揮するのに反して、からし菜のこの病原体に対する顕著な効果は認められませんでした。

アザミウマの脅威を抑える: カリフォルニア大学リバーサイド校のマーク・ホドル氏は、アボガドの木の根元を堆肥で被覆することにより、土壌からのアザミウマ [7] の発生を半減させました。アザミウマは、多くの果樹園の害虫と同じように、土の中で蛹になります。ですから、捕食性のダニ類、トビムシ類、オサムシ類(ゴミムシ類)、殺虫性の菌類や線虫類が、アザミウマ退治に貢献している可能性が考えられます。というのは、ボドル氏は、堆肥で覆った土壌中に昆虫病原性のボーヴァリア菌(Beauvaria bassiana[8] が高い水準で存在していることを確認したからです。

植物に寄生する生物を抑制する土: 植物に寄生する生物を抑制する土。カリフォルニア大学リバーサイド校のJ.オル・ベッカー氏は、連作になじんだ土壌が植物に寄生する線虫を抑制することを発表しました。このタイプの発病抑止性は、5、6年同じ土壌で同じ作物を栽培した場合にのみ、つまり連作を続けた場合にのみ、その土壌に発現し、発達していくのです。例を挙げると、テンサイを連作した場合、テンサイシストセンチュウに対してその土壌が抑止性を発揮していきます [9]。少量の土を別の地面に移す事により、その発病抑止性も地面に移殖されるので、その現象は微生物学的なものと考察されます。

このことは、現在、秀明自然農法ネットワークで実践されている秀明自然農法のように、毎年毎年同じ農地で同じ作物を栽培する農法について、その背後にあるいくつかの論理的根拠を説明するものといえるでしょう。

研究の政治的絡みについて今一言… 他に類を見ないほど優れた研究者であるカリフォルニア大学バークレー校のミゲル・アルティエリ氏は、農業生態系が農業を始めた時からずっと同じ状態を維持していく上で、植生の多様化と土壌の肥沃さとのバランスを保つことの重要性について発表しました。アルティエリ氏は、土壌中の窒素の影響により引き起こされた病気の作物を害虫が捕食するという研究の結果を概説しました。 .

それから、アルティエリ氏は、遺伝子組み換え作物の無用性と危険性について少し言及しました。これに対して、他のカリフォルニア大学のパネリストたちは、その後、遺伝子組み換え技術に対し中立または賛成の立場で、注意深く言葉を選びつつ、返答していました。この大学の教職員は、遺伝子組み換え技術に対し、支持する――あるいは、少なくとも中立の立場をとる――といったように、間接的とはいえ、極めて強い圧力を掛けられているように見受けられました。その典型が、イグナシオ・チャペラ氏の事例です。バークレー校内や世界中の専門家たちから満場一致とも言えるほどの支持を受けていたにもかかわらず、この春、職位を解雇されました。大学とノバルティス社の間で交わされた2,500万ドルの研究契約を氏が批判したのに加えて、メキシコで、遺伝子を組み換えられたDNAが在来種のトウモロコシを汚染したことを示す研究論文を発表したのに引き続き、この処分が下されたのです。

益虫の飼育: カリフォルニア大学共同公開講座サリナス郡校(農業サービス機関)のウィリアム・チェイニー氏は、益虫飼育用植物 [10] について発表しました。その植物は野菜作物の益虫に花蜜を提供します(益虫の多くは花蜜を吸う段階を経て、その後農作物など周囲の植物へ産卵します。孵化後、幼虫になると、アブラムシや他の害虫を貪るように食べてくれるのです。)

チェイニー氏や他の発表者の言うところによれば、益虫飼育用植物の選択基準を挙げると
 ・益虫を引きつけること, 
 ・開花が早く、開花期が長いこと, 
 ・作物に対する病原体の宿主になる可能性が低いこと, 
 ・雑草に負けない成長力があること, 
 ・それ自体雑草になる可能性が低いこと, 
 ・害虫を誘引しないこと, 
 ・種や植え付けの費用が安いこと, 
となります。
チェイニー氏は、スイートアリッサム(ニワナズナ)、コリアンダー(コエンドロ)、ソバ、それと、穀類(例えば、麦、トウモロコシ等の穀類から一種類を選択)を組み合わせることを好んで選択しています。ここで選択した穀物は風除けとなり、さらに、それ自体が益虫にとっては代替の餌となります。

スイートアリッサムはサリナス・バレーやカリフォルニア沿岸部で実際にうまく軌道に乗り、畝の約5%または作付面積の約5%に、野菜作物の益虫飼育用植物として植えられています。ハエ目ハナアブ科の幼虫でアブラムシを主食としているものにはいくつもの種類がありますが、スウィートアリッサムはこれらを主要な益虫として誘引してくれるのです。

チェイニー氏は、アブラムシの再発生は、具体的には、アメリカ農務省に新しく有機認定登録された殺虫剤「Entrust®」(有効成分スピノサドはスピノシンAおよびスピノシンBの2つからなり、昆虫の神経伝達系に作用し、独特な殺虫効果を持つ)の散布が原因であるという注目すべき観察結果の一つについて言及しました。
この現象については、
 ・宿主のアブラムシを殺虫してハナアブの食路が断たれるため、または、
 ・殺虫剤の致死能力がハナアブにも及ぶため、
の、いずれかの可能性が考えられます。スピノサドは、有機的害虫防除プログラムにおいて爆発的な人気を得てきました。その一方では、有機認定農薬の益虫への影響分野に関する研究は、皆無に等しいまま現在に至ってしまったのです。

害虫防除のための生息環境管理: ラミィ・コルファー氏は、カリフォルニア大学デービス校で私と同じ時期に同じ学科で博士号を取得した同期ですが、現在、有機のサラダミックスの栽培を手がける最大手、サリナスに在るミッション・オーガニクス社に勤務しています。コルファー氏は、益虫飼育用植物と害虫防除のための生息環境管理に関する研究について発表しました。レタス20畝ごとにスイートアリッサムを植え、できる限り早期の開花を促します。それにより、レタスにはびこるアブラムシを減らし、作物の損失を1%以下にとどめることに成功してきました。――アブラムシの蔓延で畑全部が台無しになるようなことがごく普通に起こる業界において、これは本当に素晴らしい成果です。

ラミィ氏もまた、有機認証を取得した殺虫剤を使用することで、アブラムシが再発生することを見いだしました。

サリナス・バレーの大手農産物企業の防虫管理専門家は、アブラムシが群がったロメインレタスの若葉の写真を見せて、語ります。「こんなのはもう気にしません。益虫が互角に張り合って、アブラムシを平らげてしまいますからね。」と。読者の皆さん、害虫管理に大変革が起こっていることをご理解頂けますね。

その資材は有機で使用が認められているか? カリフォルニア州食品農業局(CDFA)のレイ・グリーン氏は、有機作物に適用される物質が有機物質認定協会(OMRI)[11] の許可リストに未掲載の場合、アメリカ農務省の国家有機プログラム(NOP)[12] 基準に適合するか否かを判断するための、今までとは異なった方法を明らかにしました。グリーン氏の第一声は会場の笑いを誘ったのですが、「天然の化合物は、禁止されていなければ全て許可。一方、化学合成物については許可されていなければ全て禁止。」という提案でした。カリフォルニア州では、下記の基準のうちどれか一つを満たせば、適用しても安全な資材と考えます。その基準を下記に記します:

  • アメリカ農務省認定の認証機関による書面での保証が付いている。
  • ワシントン州農務省(WSDA) のウェブサイト中の許可資材リストに掲載されている。WSDAは、アメリカ農務省国家有機プログラム(NOP)認定の認証機関である。
  • 製造者が、その資材についてアメリカ農務省規則を遵守しているという書面での自己開示情報を記載している。(しかしながら、グリーン氏によると、カリフォルニア州では製造者が資材の適合性を偽って申告するというような法的阻害要因がかなり大きいという。)
  • 一種類の植物から抽出された植物エキスのように、その資材は単一の原料から作られている。
  • 米国環境保護庁(EPA)による使用許可の印として、緑の花マークのシールが貼付されている。EPAは有機栽培への適用に関して、資材の使用許可を与えている。

カメムシ対策: カリフォルニア大学デービス校昆虫学部のレス・エラ氏は、農場設計を工夫することによって、いかにしてカメムシの被害を減らすことができるかについて述べました。米国に分布する多種のカメムシの中でも、カリフォルニアでは Euschistus conspersus (英名 consperse stink bug)が問題となりますが、越冬の場所と早春の時期の餌を除去することが解決の鍵となります。ブラックベリー(クロイチゴ)畑は、特に重要な越冬場所となります。カラシナや大根のようなアブラナ科の草本類は、早春の時期に重要な餌になるので除去しなければなりません。

有機の害虫駆除製品――開発コストが高い: ダウ・アグロサイエンス社のバラト・ビサブリ氏は、スピノサド [13] を有効成分とするEntrust®とGF-120 NF®の開発について発表しました。Entrust®は、多くの有機農家に既に名の知れた液剤です。GF-120 NF®は餌で誘殺するタイプで、オリーブミバエを効果的に駆除するため、現在使用が広まりつつあります。地中海では最悪のこのオリーブの害虫は、数年前にカリフォルニアのオリーブ園に侵入したのです。

ダウ・アグロサイエンス社のビサブリ氏は、1982年、カリブ海地方の閉鎖されたラム酒の醸造所で、スピノサド化合物が分離された放線菌が同定されたことに注目しました。製品としての認可は1997年に下りました。発見から商品発表まで15年もかかっていますが、この業界にはよくあることです。

ビサブリ氏は、害虫駆除の新製品を開発するためには、下記の四つの基準を満たす必要があるとしています:
 ・駆除効果
 ・総合的病害虫管理(IPM)への適合性
 ・害虫に抵抗性をもたせないような使用量の調整のし易さ
 ・環境への配慮
有機の害虫駆除製品は、開発コストが高い上に、有機市場が狭いため、近い将来に新しい有機製品登場する兆しはほとんど見られません。

有機殺虫剤が益虫に及ぼす影響: カリフォルニア大学リバーサイド校昆虫学部のマーシャル・ジョンソン氏は、寄生バチの一種であるDiadegma insulare [14] や捕食性の天敵に対する有機殺虫剤の殺虫効果について、調査結果を報告しました。調査対象は、最も普及している二製品:スピノサドとニーム/アザジラクチン [15] です。彼は、ほとんどの益虫に悪影響(86%が致死)があることを見いだしました。スピノサドによる影響を最も受けたものは、寄生バチ Diadegma insulareでしたが、ニーム製品の影響はそれほど出ませんでした。一方、捕食性の益虫に対しては、ニームは、スピノサドより大きな影響を与えました。殺虫性の生理活性物質を産生する微生物であるボーヴァリア菌やBt菌 [16] は、上述の二製品に比べて益虫に対する影響が小さくすみました。

堆肥が「窒素」放出を促進: カリフォルニア大学デービス校のウィリィ・ホワス氏は、被覆作物を鋤き込む直前、または、直後に堆肥を施すと、「窒素」の放出に対してある種の触媒作用があることに注目して、有機農法における有機物の動態について概説しました。堆肥にはその触媒作用によって、「土壌中に鋤き込まれた被覆作物のバイオマス(生物体量)」中に占める「微生物が分解可能な有機物」の割合を増大させる働きがあります。その結果、「植物にとって利用可能な溶存性の無機態窒素」が土壌中に放出されるのです。

「窒素」放出の促進 その2: カリフォルニア大学公開講座 [17] のマーク・ガスケル氏もまた有機作物を栽培している圃場環境への窒素供給のための有機物の管理方法について論じました。一般的に、作物における窒素需要のピーク期は、播種の25〜40日後から始まって、30〜60日間続きます。ガスケル氏は、土壌の硝酸塩成分(これは植物にとって利用可能な溶存性の無機態窒素に相当する)を最低20ppmに保つことが重要だと主張します。更に、有機肥料に加えて、窒素供給源として被覆作物を栽植することの重要性を強調しました。被覆作物を窒素供給源にすれば、有機肥料の施用量を1ヘクタール当たり窒素換算で220kgから120kgへと削減が可能です。

(私には「1ヘクタール当たり窒素換算で220kgから120kg」といった数値は高いように思えました。有機農業においては、栄養分として窒素は非常に重要な要素であり、New Farm®に掲載するに際し、なんらかの注釈が必要と思われますので、堆肥の専門家であるラルフ・ユルゲンス氏に確認の電話を入れました。彼はカリフォルニア州テュレアに在るニューエラ農業サービスで、多くの有機農家をお得意先にしています。彼も、「1ヘクタール当たり100〜200kgの窒素を堆肥として投入するのは高い」と、私と同じ見解でした。一般的に堆厩肥の平均窒素含有率は2〜3%なので、この割合では1ヘクタール当たり25〜50トン位の堆厩肥を投入することになってしまうでしょう。現在まで、堆肥や厩肥によるリン過剰が問題になってきているのに。なおかつ、「微生物が分解可能な有機物中の窒素量はどのくらいあるのか?」とか、「有機物の源としての生物体から、植物にとって利用可能な溶存性の無機態窒素が、土壌中にどのくらいの割合で放出されるか?」といった課題については、現在においてもよく理解されていないのです。ユルゲンス氏は被覆作物とはるかに低い割合での堆肥の投入――年間1ヘクタール当たり3〜5トンの堆肥の投入――で作物にとって十分な窒素を得ているのです。堆肥、被覆作物、作物の窒素需要については、今もって、明らかにしなければならない課題がたくさんあるのです。)

最適の被覆作物: カリフォルニア州サリナスに在るアメリカ農務省農業研究局のエリック・ブレナン氏は、オーガニック栽培の研究をしているアメリカ農務省きっての科学者です。今回、ブレナン氏は被覆作物の三要素――種子コスト、播種密度、雑草との競合性――に関する研究について発表しました。被覆実験に使った植物は、マメ科植物とライ麦の混植、菜の花のみ、ライ麦のみの3種類で、それぞれにおいて推薦される播種密度(1x)とその3倍の播種密度(3x)について比較しました。マメ科植物の種子とライ麦の種子とを混合して推薦密度(1x)で播種した場合、成長した植物のバイオマス(生物体量)が、他の条件の20倍に達することが分かりました。どの被覆作物のタイプも3倍の播種密度(3x)にすると、早い時期(11月)にはバイオマスは約2倍になり、このことは窒素の生物体内への取り込みと圃場から外部への硝酸塩の浸出防止には利点となります。ところが、冬の終わり近く(2月)になると、推薦播種密度、3倍播種密度いずれにおいても、バイオマスは等しくなってしまったのです(つまり、種子に3倍のコストをかけても、その効果は長くは続かないという問題があるのです)。

マメ科植物とライ麦を混合する場合には、もう一つ問題があります。最終的にマメ科植物は全バイオマスの約10%にしかならず、ライ麦に比べて、圃場全体への窒素固定はほとんど望めないのです。しかし一方、マメ科植物は種子コストの90%を占めるのです(窒素固定をほどんど望めないのに、コストばかりかかるのです)。

桃の有機栽培: カリフォルニア大学共同公開講座ユバ市校(ここも農業サービス機関として活動しています)のジャニン・ハセイ氏は、桃園の地盤管理についての研究を発表しました。サブクローバー [18] とソフト・チェス [19] の組み合わせが、窒素を十分に供給する上で被覆作物に適しています。ハセイ氏は、有機栽培への移行に関しては、新しく有機として始めるより、現在ある桃園から転換を図る方が容易である、と指摘しました。成熟した木の枝や葉が森のように覆い茂ることによって雑草が抑えられる、というのが主な理由です。

オーガニックに関する研究費再考:.カリフォルニア大学持続可能な農業研究教育プログラムの顧問ショーン・スウェジー氏は、連邦政府とカリフォルニア州からオーガニック農業へ配分される資金源について再検討しました。連邦政府からの援助プログラムは:

  • 19月に支払われる予定のCSREES [20]からの助成金1,500万ドル。オーガニック農法転換プログラムのために190万ドル。
  • $1アメリカ農務省経済研究局が、有機農産物の商品価格データ収集に50万ドル使用予定。;
  • thアメリカ農務省農業研究局(ARS: Agricultural Research Service)主催の全米オーガニック研究会は、何らかのオーガニック関連の研究に従事している研究者を約100名集める。
  • アメリカ農務省農業研究局 (ARS: Agricultural Research Service)主催の全米オーガニック研究会 は、何らかのオーガニック関連の研究に従事している研究者を約100名集める。.
  • カリフォルニア大学の機構だけで、オーガニック農法や食品に関する研究者は現在60〜70名ほど在籍している。

スウェジー氏は、カリフォルニア州のオーガニック農産物の直売収益は3億5千万ドルであり、一方でオーガニック製品加工業者は50億ドル――約15倍の増加――と申告していると、興味深いコメントをして、オーガニック産業の付加価値の様相について明らかにしました。もちろん、この比較では、加工業者が加工に必要とする何らかのオーガニック農産物を輸入する分は考慮されていません。しかしながら、その統計はカリフォルニアにおけるオーガニック産業の実情を物語るよい例ではあります。

いちご畑の害虫吸引を削減: スウェジー氏はまた別の発表で、いちごのオーガニック栽培に被害を及ぼすカスミカメムシ科の一種であるLygus hesperus [21]の防除に関する研究を取り上げました。現在大規模なオーガニック農家は、大きな掃除機を使ってこの害虫を吸い込んでいます。誘引作物として16畝ごとに植えられたアルファルファに、Lygus hesperusが沢山寄り付くので、アルファルファの畝だけ掃除機を掛ければ、畑全体に掃除機をかけるよりもうまく駆除でき、掃除機を掛ける手間を75%削減したということをスウェジー氏は示しました。.

オーガニック農法の研究理由は? 有機農業研究基金のマーク・リプソン氏は、オーガニック農法に関する研究の必要性について語り、品種改良と家畜管理については現在に至るまでずっと研究に弱い部門であったと指摘しました。(品種改良については、間もなく掲載予定のメキシコの育種技術Horizontal resistance [22]に関する記事を参照してください。)また、土壌の性質や生物学的な害虫防除については、オーガニックでは強い研究分野として現在に至っています。

オーガニックに関する統計 その1: カリフォルニア大学デービス校の農業経済学者カレン・クロンスキー氏は、カリフォルニア州のオーガニック産業に関する統計値を発表しました。オーガニック農産物で最も高い収益を上げているのはブドウ、続いてレタス、ニンジン、イチゴ、トマトの順です。作付面積では米が最大で、次がブドウです。この10年間で、オーガニックの圃場面積は生産者数の増加に比べて遥かに急激に伸びてきました。これは二つの要因に牽引されています。一つは、既存の農地の面積が拡大したこと、もう一つは、近年オーガニックの穀類(米など)の作付け面積が相対的に拡大したことです。後者の要因に関して、一言付け加えますが、一戸の農家あたりでは、野菜や果樹より、穀類の方が作付面積が大きいのです。

カリフォルニア州は、いわば「発展途上国」のような状況にあります。というのは、農業人口の3%に当たる大規模農家が生産総額の55%を独占する一方で、全農業人口の50%に上る小規模農家の生産額は僅か2%でしかないのです。

オーガニックに関する統計 その2: カリフォルニア大学デービス校のデスモンド・ジョリー氏は、カリフォルニア州のオーガニック農家の社会的状況について簡単に述べました。それによると、平均してオーガニック農家は教育水準が高く(大卒の割合は、慣行農家が37%であるのに対し、オーガニックでは61%)、コンピュータ技術の利用率もオーガニック農家は、慣行農家の2倍近くに上ります。

オリーブバエを誘引するソーダ瓶: カリフォルニア大学公開講座ソノマ郡校(ここは農業サービス機関として活動している)のポール・フォッセン氏は、高度な科学技術を使用しないで、オリーブバエを誘引して捕獲するソーダ瓶が、試したあらゆる仕掛けの中でどれだけ優れていてでかつ最も安価であったかを説明しました。このソーダ瓶は、スペインで開発され、誘引物質としてトルラ酵母を使っています。GF-120®は、餌で誘引し、スピノサドでオリーブバエを退治するタイプの製品であり、これについても別に行われた試験で、オリーブバエに対する防除効果が確認されました。

有機除草剤は効かない: サリナスにあるアメリカ農務省農業研究局のカレン・バウムガートナー氏は、酢とチョウジ油を原料に作られた有機除草剤Matran®と、他の除草法との比較を行いました。比較対象となった除草法には、モンサント社の除草剤ラウンドアップ®(Roundup®)による方法も含まれています。その結果、Matran®は、葉の広い雑草に対して最も効果がありました。けれども、有機除草剤は、モンサント社の製品ラウンドアップ®には到底追いつけないほどの差があることが明らかになったのです。

地下灌漑システム が雑草を抑える: カリフォルニア大学デービス校のトム・ラニーニ氏は、カリフォルニアのような夏季に乾燥する地域では雑草の種の発芽をほぼ抑えられるという、地下灌漑システムの効果についての研究を発表しました。この地下灌漑装置は、25センチメートルの深さで地下に埋められています。

一方、ラニーニ氏は、通常のスプリンクラーや畝間灌漑システムを用いて冬季灌水[23]試験を行いました。この方法では、雑草の種子を発芽させた後、土へ鋤き込みます。その結果、雑草を鋤き込むまでに、積算平均気温が110〜130℃・日になるまで発芽を促す期間を設けておくのが、この冬期潅水で草を抑制するにのに最適であることが明らかになりました。(積算平均気温110〜130℃・日の算出: 10℃を基準として、平均気温が30℃で約6日間経過した場合、積算平均気温を算出すると、(30℃―10℃)×6日=120℃・日となる。誤差を考慮すると、積算平均気温は110〜130℃・日となる。ちなみに、平均気温が30℃より低く推移する場合、積算平均気温が110〜130℃・日になるまでに、6日以上の期間が必要になるといえる。)

 
 


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