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ジェイソンの世界オーガニック冒険の旅
毎回一つの農場を体験し、そこでの生活を学ぶ


スペインのワイン産地で雑草と伝統に挑むかつてのブドウ園が生まれ変わり――タラゴナ地方で初めてのオーガニック・アーモンド栽培が始まる

ジェイソン・ウィトマー


新しい風景に目を投じて

上の写真:伝統的なスペインワインの産地で豊かに実ったオーガニックのオリーブの木、背景には慣行農法のヘーゼルナッツの果樹園が見えます。

下の写真:若々しい実をつけたスペイン産アーモンドの枝。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


農場紹介
環境に配慮したアーモンドとオリーブの農園

所在地: アルコベルは、バルセロナから南へ汽車で2時間ほどのカタロニア地方南部にあります。ここはかつてスペインのワイン産地の中心でした。

農業のタイプ: オーガニック

面積: 15ヘクタール

栽培作物: アーモンド、オリーブ

 

 

編集者より
ジェイソン・ウィトマーは
2003年1月8日にアメリカを発ち、6ヶ月の冒険の旅でアジアとヨーロッパを横断し、さまざまな農場を訪れています。


ジェイソンの冒険の旅がどのようにして始まったのか、そしてどこを訪問してきたのか、下記のリンクをクリックして読んでみてください。

ジェイソンの世界オーガニック冒険の旅:

イントロダクション: オハイオの旅人、“世界草の根”ネットワークの農業通信員としてデビュー

はじまり::おじいさんの農場の手伝いから、2つの大陸を渡ってオーガニック農場への滞在まで

タイ東部: 農家、建築家であり、余暇を楽しむ人でもあるジョン・ジャンダイと出会います

ラオス: 過去の化学肥料による農業が、この農家にオーガニックにこそ未来があると確信させるにいたった経緯

タイ: “アソック”活動―タイの仏教徒が築くオーガニック農場と持続可能なコミュニティ

インド: 緑の革命から再生へ

ヒマラヤ: 西洋人は 侵入したが西欧化はなされず

スペイン: スペインのワイン産地における雑草そして伝統との闘い

 

 


ペイン北東部カタロニア地方を通ってバルセロナから2時間汽車にゆられるとアルコベルという小さな町に着きます。汽車は、陽が燦燦と降り注ぐ地中海の海岸線を南へ向かってゆっくり走った後、小さなマツに覆われた山々と段々畑が広がる内陸部へと曲がりくねって進みます。このあたりは伝統的なスペインワインの産地ですが、赤褐色の耕地にはアーモンド、オレンジ、ヘーゼルナッツ、オリーブの木々も並んでいます。

 

「その物件を見に行ったとき土地付きかどうかは全くわからなかったのだけど、たまたま地主さんに庭がどこまであるか聞いたところ、13ヘクタールの土地があることを知ったのです。」

農園との出会い

アルコベルから約5kmの郊外、環境に配慮してアーモンドとオリーブを栽培している15ヘクタールの農園の真ん中に、築200年の石造りの家が建っています。木製の扉は城門のように巨大です。ここはイギリス出身のロナルド・ボイドとイレーネ・マクパーランドの家です。二人はそれぞれに職業を持っているのですが、この農園の作業に多くの時間を捧げてきました。二人は、この土地を耕し、アーモンドの木を剪定し、収穫をしてきました。たわわに実った枝を棒で叩くと、アーモンドの実がシャワーから水が吹き出るが如く次々に落ちてきます。収穫後、実の重さから解放された枝は元の姿に戻るのです。

ボイドは英国スコットランドの田舎で育ちました。1978年に彼はスペインに引っ越してきて、石油会社の安全監査官の仕事に就きました。でも、彼は農業の生活から離れるに堪えない思いでいました。14年前、彼は住まいを探していて偶然その農園を見つけました。「何かしら修理する必要があっても、すぐに引っ越して住める古い家を探していたのです。」と彼は言いました。「その物件を見に行ったとき土地付きかどうかは全くわからなかったのだけど、たまたま地主さんに庭がどこまであるか聞いたところ、13ヘクタールの土地があることを知ったのです。」

意欲的に農園を手伝うジェイソン
ジェイソンのようなWWOOF(ウーフ)のメンバーたちは農園に協力してボイドとマクパーランドを助けています。彼らは地元の高い人件費に代わって、経済的に節約となる労働力を提供しています。

ボイドは石油会社でフルタイムで働いていましたが、彼の心はその土地に引きつけられていました。彼は生まれ育った故郷のことを話してくれました。「鍬を持ち上げられる年頃になって以来、私はいつも何かを育てることに関心を持ってきました。私が育ったスコットランドの田舎は混合農業が盛んな地方で、農家は作物生産と酪農とが密接に関連した農業を営んでいました。私はそんな農場に囲まれながら大きくなったのです。」と彼は懐かしそうに振り返ります。そこでは、農家は畜産の糞尿から厩肥を作ったり、家畜の排泄物と、家畜の寝床の敷草などを混合し、水でドロドロに溶かして液肥を作ったりしていたそうです。地元の農家はそういった厩肥や液肥を圃場一面に撒いていました。彼は続けて語りました。「その頃私たちが食べていた果物や野菜はほとんど地元で栽培された旬のものばかりで――それは本物の果物や野菜の味がしていました。――いろいろな意味でその時の経験が無意識に私のルーツとなったのです。」

環境の変化がこの地域の農業に影響を及ぼした

カタロニア地方にあるたいていの農場と同じように、彼の農場は元々ブドウ園でした。しかし20世紀の初頭にアメリカから侵入したブドウの病気であるフィロクセラ禍のためにブドウの木は壊滅的な状態に陥ってしまったのです。そして最近になってようやく、再びブドウの木が栽培され始めたのです。
20世紀初頭には、ヘーゼルナッツがその地方の主要産物としてブドウ園に取って代わるようになりました。しかし企業がトルコや南アメリカなどの地域からヘーゼルナッツを買うようになって、価格が下落してしまい、また、水不足が深刻になったせいでヘーゼルナッツの栽培は困難になってしまったのです。

イングランドから移住してきたマクパーランドは、地方紙の新聞社で働いています。彼女は、この地域で起こった変化について説明してくれました。「当時、水はもっと豊富でした。でも、環境の変化が原因で水が枯れてしまいました。」彼女は続けて語りました。「山火事はたびたび起こりました。それに、以前この辺りにはとても大きな川があったのに、今では水はほとんど地下水だけになってしまったのです。」

あらゆる木をまっすぐな列に植栽 かつては雑草が覆い茂っていましたが、ボイドは今、手入れの行き届いた10ヘクタールの農園で2,500本のアーモンドの木を栽培しています。

ボイドがその農場を購入したときには3.6ヘクタールのアーモンド園がありました。アーモンドは水をほとんど必要としないため、広く一般的に栽培されていた作物でした。他に
77本のオリーブの木と20本のイナゴマメの木もありました。その土地は5年近くほったらかしにされていたので、雑草が一面に覆い茂っていて、入り口の300メートルの土の小道でさえ息が詰まるほどでした。ボイドは7月にこの家に引越してきました。――しかし、雑草を管理する手立てを講じるには時期が遅すぎており、加えて、そのための道具もありませんでした。

自力でアーモンド栽培を始める

「最初の年、私は手作業でアーモンドを摘み取ってバスケットの中に入れていました。私はそのバスケットをいつも持ち歩かなければならなかったのです。なぜなら、雑草がとても高くぼうぼうに生えていてネットを広げられなかったし、バスケットを下に置くことさえもできない程だったからです。」とボイドは当時を振り返ります。「アーモンドの殻をどうやって処理するかについては多少、前の地主から聞かされていたし、卸売り業者の住所も知っていました。ただ、違った品種を別々にしておかなければならないということを彼女は言わなかったのです。」

最初の年に収穫ができたのはロナルド・ボイド(愛称ロン)がスコットランド人特有の頑固な気質ゆえだったと、マクパーランドは持論を述べます。「ロンは収穫したアーモンドを背負って山から下りてきて、車で共同組合へ運んだのよ。」と彼女はにこやかに笑いながら言いました。「6種類の違う品種があったなんて知らなかったから全部混ぜてしまったの。でもね、ロンは、きちんと選別した場合の価格よりも安い値段でその場で売ってしまうんじゃなくて、そのあと2、3週間もかけてアーモンドを選別したのよ。」

最初の数年間、ボイドは耕耘以外はすべて手作業で行っていたので、自分のために働いてくれる地元の農家を雇いました。アーモンドの木が2月に花をつけた後、後の収穫をし易いようにするために、彼は真ん中の新芽の芽かきを行い、木の剪定をしました。8月に実が熟すと昔ながらのやり方に従って、収穫作業をしました。まず地面にネットを敷き、木の枝を棒でたたいてネットの上にアーモンドの実を落とし、次いでネットをじょうご形に丸めて実をくるみました。そして袋に入ったアーモンドの実をベッドカバーの上にどさっと広げ、殻を取り除き、選別しました。それから地元の協同組合へ持っていき、そこで、計量してもらいました。

「鍬を持ち上げられる年頃になって以来、私はいつも何かを育てることに関心を持ってきました。私が育ったスコットランドの田舎は混合農業が盛んな地方でした。私はそんな農場に囲まれながら大きくなったのです。その頃私たちが食べていた果物や野菜はほとんど地元で栽培された旬のものばかりで――それは本物の果物や野菜の味がしていました。――いろいろな意味でその時の経験が無意識に私のルーツとなったのです。」

最初からボイドは、農薬などは全く当てにしていませんでした。「私はこれまで『一般の』農家が使用するような量の農薬を使ったことは一度もありません。農薬を使わなければ、農薬に経費をかける必要がないばかりでなく、農園の土壌にとっても、私自身が使う上水にとっても良いからです。上水の水源は地表面からわずか17メートル下に位置しているので、農薬を使えばそれらは地中に浸潤し、いとも簡単に水源を汚染してしまうのです。」と彼は説明しました。「ミツバチはアーモンドの受粉に重要な役割を果たしています。私たちの農園には22個のミツバチの巣があるのです。だから、私は不快な農薬を農園に投入したくなかったのです。」ミツバチの食糧は花粉なのですが、ミツバチは汚染された土壌に育つ花や農薬がかかった花の花粉は集めないのです。

ボイドは環境に配慮した農業をしたいと願っています。こういう彼の願いは、環境問題に対する彼の意識の高さと、スコットランドで彼が授かった教育に由来していると、マクパーランドは考えています。「ロンは石油会社で働いてきて、石油会社が引き起こした多くの問題を目の当たりにしてきたのです。」と彼女は言いました。「第一に、ロンは自分の農場を取り巻く環境への配慮に対して自ら責任を持つべきだと考えていると思います。第二に、環境に配慮し、責任を持てる農業こそが自分が歩むべき道であるとロンは判断したのです。土や水や生き物に配慮した農業では経費はかからないけど、はるかに多くの作業時間を要します。でも、ロンは頑固なスコットランド人だから――環境に配慮した農業で農園をよりよいものにできると思ったのです。」

早い段階でボイドは、農家がよく直面する政府の不合理な制度について知りました。「私は除草剤、殺虫剤、殺菌剤などの使用を最小限度に留めていました。」彼は言いました。「その頃、私はヨーロッパの助成金制度を紹介されたのですが、農薬に充分お金を使っていないという理由でペナルティを科せられたのです。」

全面的にオーガニックへ

8年前、ボイドは完全にオーガニックに転向することに決めました。「数年間私は農薬の使用に関してヨーロッパの官僚と戦ってきました。ですから、オーガニック栽培フルーツの市場が拡大しつつあると知ったとき、オーガニックに切り替えることに決めました。すでにかなりオーガニックに近い状態で栽培していたので、完全に切り替えることはさして難しくはないだろうと思ったのです。」

ボイドは地元の農政部の代議士に話しを持ちかけました。彼もアーモンドを栽培しており、ボイドの親友になりました。ボイドとその代議士は‘環境に配慮した’農業を行うための助成金を申請しようと提案しました。二人は助成金を受け取ることができ、今ではタラゴナ地方でたった二軒だけしかない環境に配慮したアーモンド農家となっています。ボイドは彼のアーモンドを「環境に配慮した、賞賛に価するアーモンド」としてイギリスとアメリカ合衆国の5つのスーパーマーケットと取引している地元の仲買業者に販売しています。全面的にオーガニックで栽培するようになる前に比べて、現在
30%増の収入があります。

仕事のできる女性
イレーネ・マクパーランド。このアーモンド園の活性化を担う二人三脚の一人。彼女は地元の新聞社で働きながら、このアーモンド園とレストランで働いています。
ボイドは現在にんにくから作った虫除け剤と、馬の糞尿から作った厩肥を使っています。草取りはほとんど手作業で行い、最近購入したトラクターで耕しています。ボイドは、トラクターを購入する時に、それに備え付ける傘状の付属品も手に入れました。このトラクターと傘を組み合わせて木の周りを一周し、アーモンドを収穫するのです。つまり、この傘は時間のかかるネットを使った収穫作業の代わりに手に入れたものなのです。しかし彼はまだゴム製のツリー・シェイカーを購入していません。この機械は、アーモンドの収穫時に使う木を揺すって実を落とす便利な機械なのですが、今後も彼がこの機械を購入することはないだろうとマクパーランドは思っています。「なぜって? 彼は枝を棒で叩いて実を落とすのを楽しんでいると思うの。」と彼女は言いました。

地域農業とスローフードの発展に貢献

2年前ボイドとマクパーランドはアルコベルにレストランをオープンしました。この地域では人々はオーガニックに対する意識がほとんどないので、食材全部がオーガニックというわけではないのですが、自家栽培のオーガニックオリーブオイルを使っています。そして裏にある段々畑で野菜の栽培を計画しています。二人は一年を通して草取り、木の剪定、収穫時にはレストランを手伝ってくれる多くのWWOOF(ウーフ)の人たちを受け入れています。二人はウーフのプログラムのおかげでうまく人手を確保しています。なぜなら、地元の人を雇うと人件費が高くつくし、この地域では人手を確保するのが大変だからです。二人は、農園内の古い家を修繕してもっと多くのウーフの人たちを受け入れることができるようにしたいと計画しています。もしかすると、ゆくゆくは、そこを伝統的な地域農業と料理法を教える地域の観光トレーニング・センター(研修所)として提供できるようになるかもしれません。

ボイドは今も石油会社で働いていますが、いつかフルタイムで農業ができる日を夢見ています。彼はアーモンドの木を
10ヘクタールの農地で2,500本に増やし、昨年は2,660キログラムの実を収穫しました。「ロンは家にいるときは、一日中外でトラクターに乗っているのよ。」とマクパーランドは言いました。「ロンの夢は毎日農場でのんびり働くことなの。ロンにとっては外でトラクターに乗っているとき以上の幸せはないんだから。」

カタロニアの山々の斜面に切り開かれた段々畑には太陽の光が降り注いでいました。スコットランドから移住してきた農家生まれの若者にとって、この地でトラクターの座席に座ることは、この上なく満喫できることなのです。


編集者より

今回のボイドのアーモンド農園がジェイソンの世界オーガニック冒険の旅の最後の訪問地です。ジェイソンとデレクは元気でオハイオに帰ってきています。今、この半年間の旅の疲れから回復しつつあるといったところでしょう。

後日――
ジェイソンが世界冒険を振り返って、最後の原稿を送ってきました。ジェイソンは6ヶ月の旅で何を見て、何を学んできたのでしょうか? さあ、世界冒険の完結編です。

 
 


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