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最後の言葉

バグダッドの男
あなたが見逃したかもしれないニュース
「私は自分の職業のために泣く」 パート2

アラン・ゲバート 2003年4月25日

編集者注記

アランのコラムは毎週金曜日にニューファームウェブサイトに掲載されます。

アラン・ゲバートはイリノイ州デラヴウァン出身のプロのフリーランス農業ジャーナリストです。 アランが22年の経験を生かして毎週お届けする調査報告、考察、事件の分析は、生産者が独立して収益をあげる実力を身につけるうえできっと役立つでしょう。 アランについての詳しい情報はここをクリックしてください(ただし英語版のみ)。

アランのコラムに関するご意見やコメント、アランへの質問があれば、どんどんお寄せください。意見などを送るにはここをクリックしてください(ただし、ご意見は英語でお送りください)。

1. バグダッドの男

農業におけるある一つの公理の正確さが日一日と増してきているように思える。 60億人が住む世界で、なぜ我々は同じ人々にばかり出くわすのだろうか。

4月21日の月曜日の出来事は、そのような事例の最も新しい証拠となった。米農務省のアン・ベネマン長官がアメリカがイラクに派遣するイラクへの上級農業顧問としてダン・アムスタッツを指名したのだ。

ベネマン長官によればアムスタッツの役割は米農務省と「イラク復興を監督する軍高官」の「連絡役(リエゾン)」であるという。

30年以上にわたり政府と民間を何度か行き来してきたアムスタッツはアメリカの農業ではおなじみの人物である。アムスタッツは、カーギル(穀物商社)、ゴールドマンサックス(投資銀行)、国際小麦委員会、北米穀物輸出協会を渡り歩いてきた人物だ。

アムスタッツの猟官の歴史は、レーガン政権の下、国際問題および商品プログラム担当の農務次官(1983−1987)になったことに始まる。当時アムスタッツはガット(関税と貿易に関する一般協定)ウルグアイ・ラウンドの特別大使兼交渉責任者に任命された(1987−1989)。

ベネマンがアムスタッツを米農務省のバグダッドに派遣することを決める前、彼はワシントンD.C.で農業ビジネスと国際貿易問題を専門とするコンサルティング会社の社長として活動していた。インターネットで検索すると、彼は頻繁に政府の公聴会などで証言し、連邦政府による農産物価格支援プログラムの削減、デカップリング(農産物の生産を直接的に刺激しない生産者への所得補償政策)の促進、関税の撤廃、自由な農業貿易の推進を主張していたことがわかる。

アメリカ農業界のマスター、アムスタッツを選任したベネマンの決定は、その翌日にオーストラリアが行った人事によって全く色あせたものになってしまった。 オーストラリアの小麦輸出の唯一の窓口であるオーストラリア小麦委員会(AWB)の前会長、トレバー・フラッジをバグダッドに派遣することを決めたのである。 アムスタッツと違い、フラッジは農民だ。

フラッジが任命されたことで、復興中のイラクにおいて、アメリカとオーストラリアともども信じている、増大している食糧食糧割り前をつり上げられた。1991年の湾岸戦争前は、イラクは年間100万トンもの小麦をアメリカから輸入していた。しかし、湾岸戦争後、アメリカの農産物を直接イラクが輸入することはなくなっていた。

(米農務省のJ.B.ペン次官は月曜日の記者会見で、イラクは米農務省の商品債権公社に20億ドルの負債があり、その利子も約20億ドルに上っていると述べた。湾岸戦争前、イラクは商品債権公社の資金を農産物の販売に利用していた。)

1991年にアメリカがイラクを去った後、その後釜に座ったのがオーストラリアだった。現在、豪州小麦委員会は、サダム・フセインのイラク穀物委員会が署名した契約を持っている。それによれば2003年に100万トン以上の小麦がイラクに輸出されることになっている。2002年にはオーストラリアのイラクへの小麦輸出は4億8,400万ドルに上った。

フラッジの任命にはフセイン政権崩壊後も過去の契約は尊重されるべきだという強硬な主張もあるものと見られる。 フラッジはまた、オーストラリアの地理的な近さとオーストラリアの古くからの貿易上のつながりを生かして、復興過程のイラクでオーストラリア産の食糧が自然に利用されるよう地ならしを行うだろう。 フラッジはまた、乾燥地帯の農業に関する知識をもっており、このことがかつて繁栄したイラクの農業の復興支援において彼の立場に信憑性を与えるだろう。

アムスタッツは困難な任務に直面している。アメリカがイラクから12年間離れていたこと、また湾岸戦争からイラクに権力の空白が生じ現在までの間、国連の食糧石油交換計画の支援で遅れをとったことは、アムスタッツがイラクの食糧事情におけるアメリカのプレゼンスを打ち立てる際の障害になるだろう。

さらにアムスタッツは米豪間で食糧価格の競争が起こった場合に、豪州産農産物よりも安く販売したと見られないように注意する必要がある。なぜならば、オーストラリアはイラク戦争について早くからアメリカを支持した国である上、ブッシュ政権は今年後半にオーストラリアと二国間自由貿易協議を始めたい意向だからだ。 両方の政治的な配慮は戦争で疲弊したイラクに食糧を売ろうとするアメリカの試みを妨げるものだ。

アメリカが求めている、国連のイラクに対する全ての経済制裁の速やかな解除とアメリカによるイラクの石油インフラの保護はアムスタッツを助けるものだ。イラクの原油生産は水曜日に再開された。 石油と引き換えの食糧輸入は今週中にも始まる。

しかし、イラクの2,700万人の市民がいますぐ輸入食糧を必要としていることに連合した各国が合意していながら、予期しうる未来において、確固たる必要量の見積もりと、どのような種類の食品が必要とされるかということは明らかにされていない。

国連の食糧石油交換計画の下、イラク人口の60パーセントにあたる1,600万人は、直接食糧支援を受けている。国連の資料によれば、この食糧支援は一ヶ月あたり約48万トンの穀物が使われているという。

2. あなたが見逃したかもしれないニュース

あまり報道されなかったけれども私たちが好きな4月のニュースを紹介します。

え? あなたも農務長官じゃなかったの?
「シカゴマーカンタイル取引所は本日、年次総会での投票結果を発表した。ディレクターに選出されたのはハーバード大学のジョン・F.・ケネディ行政大学院政治学研究所、アキン・ガンプ・シュトラウス・ハウアー&フェルドLLP社の上級顧問兼コンサルタントのダニエルRグリックマン氏(58)。」シカゴマーカンタイル取引所のプレスリリース、4月22日

財布の紐を締めろ!
「連邦政府、2003年度上半期に2,527億ドルの歳入欠陥。前年同期比でおよそ2倍の赤字幅。」 ウォールストリートジャーナル、4月21日

容疑者を根絶せよ
アン・ベネマン農務長官は本日、バイオテクノロジーと21世紀の農業諮問委員会の新しいメンバーを発表した。顔ぶれは,,, キャロル・クレイマー(クロップテック社チーフサイエンティフィックオフィサー)、リチャード・T.・クロフォード(アメリカ種子貿易協会 会長)、マイケル・D.・ダイクス(モンサント社政府担当副社長)、ランダル・W.・ ジロー(カーギル社スタッフサイエンティスト)、テリー・メドレー(デュポン社国際規制担当副社長)、ロナルド・オルソン(ジェネラルミルズ社副社長)、リサ・ザノリ(BASF社国際規制および政府関係担当部門)。米農務省のプレスリリース、4月8日

子豚、アイオワへ行く
アイオワ州農務部によれは、同州が昨年輸入した繁殖用の豚は記録的な145万匹に上った。 雌豚を出荷する農家が輸入の影響を受けると、アイオワ州農産地での雇用の減少が懸念される。豚肉の食肉処理よりも肥育農家の方が多くの人員を雇用するからだ。 デモイン・レジスター紙、4月19日

新しいもの、他に何がある?
食料品にバイオテクノロジーを活用して生産したことを表示すると、消費者の食品購買意欲が減退。 このブリテンは経験的な証拠を提示する... それによれば、ラベルは確かに機能していることがわかる。 特に、全ての情報処理の下で、消費者は「遺伝子組み換え」と表示するラベルがある食品を平均で14パーセント値引いた。 性別、収入、その他の人口統計的な特徴はバイオ食品の購買意欲にわずかな影響しかないことが明らかになった一方、利害関係者および独立した第三者からの情報は強い影響力があることがわかった。」 米農務省、バイオテクノロジー食品の消費者需要における情報の影響 競売実験から得られた知見 技術ブリテン No. TB1903,32ページ 2003年4月

あなたの健保のあなたのお金
ならばなぜ、健康保険より減税の優先順位が高いのか? 政策方針はこういうことだ。高額所得者の減税は経済成長の鍵であり、景気さえよくなれば全ての人が恩恵をうける。しかし、その主張を裏付ける証拠はない。サプライサイド論者が減税を打ち出してから20年間以上、普通の労働者は景気が良くなったことを実感したことはない。ビル・クリントンが高額所得者に増税した後の全ての上昇分を入れても、実質給与の中央値は1979年に比べて7パーセント上昇したに過ぎない。ポール・クルーグマン、ニューヨークタイムズ、4月25日

私たちがしなければなりませんか?
米農務省マーケティングおよび規制プログラム担当事務次官ビル・ホークスは、同省が原産国ラベル(COOL)を支持しなくても、農務省は2002年農場法で下院が承認した法律の実施に「ベストを尽くして」取り組んでいくと誓約した。オスターダウジョーンズ、4月23日.

3. 「私は自分の職業のために泣く」 パート2

詩人が4月は最も残酷な月だと言ったとき、彼の頭に農業マスコミのことはなかったはずだ。それでも、4月は農業ジャーナリストにとって最も残酷な月だ。なぜならば、この業界で4月は解雇通知の季節だからだ。

なぜ4月? 最も一般的に読まれている農業関連の雑誌の収益は、12月から3月、つまり冬の農閑期に大量に掲載する広告による収入に依存している。普通、ある雑誌が1年間に上げる収入の半分は、大量の広告を掲載する冬に稼ぎ出されている。4月1日までには、その年の売上がある程度わかるということだ。だから、収入の多い冬であれば、編集者は4月以降も仕事を続け、収入の少ない冬であれば、アディオス!仕事を失う。

2週間前、インターネットの電子が農業ジャーナリストの悲しい現実にたいする私の悲嘆を伝えていたまさにそのとき(第44号「私は私の職業のために泣く」)、ファームプログレスパブリケーションズ社は今年の冬は寒くてつらかったと発表した。 同社はベテランのライターと編集者を6人も解雇した。

社長兼発行人のチャック・ロスは、週刊紙「アグウィーク」(ノースダコタ州グランドフォークス)のインタビューで、フルタイムのスタッフの19%にもあたる人員削減を「辛い」と語った。

確かに辛かっただろうが、ファームプログレス社の前途はさらに辛くなりそうだ。そして読者も。ファームプログレス出版社の18誌(その中にはイリノイズ・プレーリー・ファーマー、アイオワズ・ウォリス・ファーマー、ネブラスカ・ファーマー、ミズーリ・ルーラリストなどの優れた雑誌もある)はたった26人の編集者でどうやって全米の農業をカバーするというのか?

「まだ、事業を立て直すにはどうすれば良いか検討している最中です。」とロスは言い、「レギュラー寄稿者」(フリーランスのライターを代弁する編集者)を支援すべく注意を払っていく、と付け加えた。

ファームプログレス出版社はオーストラリアのルーラル・プレスの子会社である。ルーラル・プレスはオーストラリアで150もの新聞と雑誌を発行し、農業関連に限ってもオーストラリア、ニュージーランド、アメリカで70紙誌を発行する巨大マスコミ企業だ。そんな大手出版社にとってさえ今回のリストラは珍しい話ではない。

珍しいどころか、金にまつわる毎度の話だ。 そこでフリーランサーにお鉢が回ってくることになる。 大部分が出来高払いで、それも安い単価で仕事をする。大半が驚異的だ。生活のために月に何本かの記事を書きなぐり、その全てが企業のひも付きだ。退職金、医療保険、交通費、有給休暇などは一切なし。

それでもフリーランサーはめったなことでは不満を漏らさない。そんなことをしたらスポンサーは原稿料を切り下げるか、あるいはそのライターを切り捨てるだけだからだ。

いわばフリーのライターは、農業出版業界の契約養鶏農家や契約養豚業者のようなものなのだ。その辺りの事情を私は知っている。私は19年間、農業分野でフリーのライターとして働いてきた。ライター稼業はキビシい仕事だ。農業についてよく言われるジョークをパラフレーズして言えば、「フリーとしてちょっとした財を成したいならば、フリーになる前に大きな財産を用意しておけ。」というところだ。

しかし、フリーランサーは雑誌に大きな代償を払ってもいる。フリーランサーの記事が大部分を占めるのは「軽い」雑誌で、歯ごたえのある、議論を巻き起こすような記事はあまり掲載されない。あまり「軽い」と部数が減り、ひいてはスポンサーもその雑誌から離れて行ってしまう。

また、農業分野のフリーライターの多くは、農業雑誌に寄稿するかたわら、農業分野のPR会社が発行する媒体にも文章を書くことが多い。 生活費を稼ぐためだ。 すると企業への遠慮が生まれ、ジャーナリズムというよりも企業のプレスリリースのような記事になりがちである。

一例を挙げよう。私がこの仕事を始めた20年ほど昔、ある広告代理店の担当者が、800ドル払うからある除草剤についての記事を1ページだけ書くつもりはないか、といってきたことがあった。その男は、記事は1日で書き上げることもできるし、それでも記事は雑誌に載るだろう、なぜならば「彼ら自身のライターの一人」であるアラン・ゲバートがそれを書いたのだからといった。

私はその仕事を受けることにしたが、一応、書面でも契約を交わした。確かに、その広報マンはそう言ったのだ。

数日後私の元に届いた契約書には、私が全て同じ除草剤についての記事を5本、連邦政府が賦与した土地に建てられた農業・工業関連の大学5校の雑草管理の専門家と協力して書くということになっていた。つまり5つの州の雑誌にその記事が載るだろうということだ。支払いは記事1本につき800ドルとされていた。

私は話が違うと広報屋に電話をした。
「え? 4,000ドル の美味しい仕事をフイにするっての?」と彼は尋ねた。
金銭面の条件は素晴らしく、おそらく他の雑誌の2倍はあった。

「じゃあよろしく」

結局私は仕事を引き受けたが、本当のトラブルはそれからだった。記事のなかで「その製品」に対する言及が少なすぎる。記事のなかで除草剤会社の専門家を十分に取り上げていない。その製品の「利点」を列挙していないなどといった指摘を受けた。結局、除草剤会社のメッセージが明快に表現されたと広告代理店が満足するまで、私は数回記事を書き直すはめになった。

その年の冬の農閑期、5本の記事はすべて目的の州レベルの雑誌に掲載された。 雑誌はその記事は偽物で実態は広告であることを知っていた。もちろん、広告代理店も、当然私もそのことを知っていた。
実際、そのことを知らないのはその記事を読んだ何万人もの「読者の皆様」だけなのだった。

© 2003 ag comm

最後の言葉は特別取り決めによって転載しています。アラン・ゲバートの連載コラムファーム・アンド・フードファイルは、アメリカとカナダの70を越える新聞に毎週掲載されています。アランへのメッセージはAGuebert@worldnet.att.net.へどうぞ。

 
 


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