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どん底へ向かう競争を終わらせる

私たちにとって必要なもの――それは下記の2つの要件に同意する企業と政府です――必要なものはそれだけです
1.自己の責任を全うし、地域社会に貢献したら、それに対して報酬を与えること
2.生物の多様性を破壊したり水質を低下させる農業関連企業には罰を与えること

持続可能性研究所 エリザベス・サウィン

2002年11月1日:
あるゲームの紹介
ここに、それほど単純ではない問題点を明確にする単純なゲームがあります。

4、5人の友達と一列に立って並びなさい。各自、右の人差し指を身体の前に差し出します。それから、一本の長い棒を、差し出されたすべての指を横切るようにして、平衡を保ちながら、それらの上に置きなさい。あなた方全体の目標はその棒を地面まで下ろしていくことであり、ルールはたった一つしかありません。それぞれの人差し指は、常に棒に接触していなければならないのです。もし誰かの指が棒との接触を失ったら、あなた方は棒を最初のところまで持ち上げて、始めからやり直さなければなりません。

このゲームを著書『システム思考戦略』に収録したデニス・メドウズとリンダ・ブース・スウィーニーによれば、ゲームのルールに従うグループの人々は、ほとんど常に棒を下ではなく上に移動させてしまいます。それぞれのゲーム参加者は棒との接触を保っておこうと努力するので、グループ全体としては徐々に目標と反対の方向に棒を押し上げることになるのです。

ゲームから重要な問題点が明示
これは何か馬鹿げたことをしているように思えるかも知れませんが、一つの重要な問題点を明確にしています。私たちは、なるほどと思えるルールの設定に合意してそれに従いつつも、誰も望まない、あるいは予想もしない結果をもたらすことがあり得るのです。

「効率」が上昇する一方で環境的社会的指標は低下
先月のコラム『メキシコ湾酸欠海域の経済』で、私は「商品農業」のようなシステムについて述べました。個々の生産者はその業界で存続するために、より低いコストで、より多くの商品を生産しようと企てて競い合います。誰もがより多くを生産するにつれ単位価格は低下し、同じ収入を維持するために生産者はより多く栽培するか、コストを削減するかしなければなりません。生産高が上昇すればコストは低くなりますが、こういう計算のやり方では、農地管理の仕事や地域社会への貢献といったものは利益とは見なされず、また土壌や水域を損なうことはコストとは見なされないので、「効率」が上昇する一方で環境的社会的指標は低下するのです。

解決策――社会の規則(ルール)を変えること
このことを解決するのは簡単なようです。規則(ルール)を変え、社会が気にかけるすべてのコストと利益を経済的意志決定の考慮に入れるようにするのです。生物の多様性を破壊したり、水質を低下させたりすることに対して支払いを請求します。忠実に責務を果たし、地域社会に貢献すればそれに報酬を与えます。

正確に解決するのは地域の問題です。大豆とトウモロコシとでは、またタラとマグロとでは解決の仕方が異なるでしょう。こうしたシステムの中で生活し働いている人々の実情に関する知識は、このシステムが、その環境的、社会的目標にかなうことのできる政策設計において、中心を占めることになるでしょう。

それ以前に乗り越えなければならない難関の存在
しかし、私たちが特定の政策を実施するようになる以前にも、乗り越えなければならない難関が存在します。世界市場に売り出されるそれらの産品に対し、ルールを変えて、社会的、環境的目標を考慮に入れるようなものにするのは容易なことではないのです。もし、汚染に課せられる税金がアメリカのトウモロコシの価格を引き上げるなら、自身の競争力学に巻き込まれている多国籍穀物の買い手たちは、環境の悪化ということを考慮に入れない他の地域の生産者から購入せざるを得ない、とすぐさま思い込んでしまうでしょう。買い手たちがもっとも安い産品を購入することに熱心である限り、一つの地域の生産栽培者は、もし他の地域の生産栽培者が同じ歩調を取らないなら、彼らのシステムのルールを改善するゆとりはありません。このようにしていわゆる「どん底へ向かう競争」のためのシステムが作られ、誰も自分の力でそのシステムを改善することはできず、また誰もが必要コストを環境、あるいは労働者や地域社会に押しつけようとする圧力を経験しているのです。

システムがこの問題をはらむのは、買い手たちの購買範囲が広域に渡り、生産者の意志決定の及ぶ境界を超える時です。この問題を解決するには、買い手たちの購買範囲を制限するか、あるいは生産者の連帯関係を拡大するかのいずれかによって、この不均衡を減らすことが必要となるでしょう。

最も広い範囲での経済システムのルールを変える
ニュースでは第一の選択肢についてより多くのことが聞かれます。それは、「反グローバリゼーション」運動が携わっている問題の一つ、すなわち、地域経済をその土地の人々の目的により一層かなったものとするための行動を彼ら自身で起こせるように、最も広い範囲での経済システムのルールを変えることです。これは極めて重要な課題であり、もし或るレベルでのルールが別のレベルで病理現象を作り出すとするなら、いかなるシステムも健全なものではあり得ないのです。

私たちの側での行動力を必要とする別の選択の可能性
しかし、私たちの側での行動力を必要とする別の選択の可能性もあります。生産地域の政府は、多国籍規模での社会的経済的目標を盛り込んだ政策に関与することができるでしょう。仮にもし、トウモロコシを生産する世界のすべての地域がこれを行うなら、多国籍規模で産品を購買する企業がより安価な穀物を買い漁ろうとしても、もはや問題でなくなるのです。彼らがどこに向かおうとも、そこには穀物生産に要した全コストを考慮に入れて引き受けている地域経済があるでしょう。

害を及ぼそうとしない人々からなる企業と共に解決を見出す
産品を購入し加工している企業――資源や地域社会に害を及ぼそうとはしない人々からなる企業のことですが、それら企業もまた共に解決を見いだすようになり得るのです。比較的少数の企業がどれか一つの産品を購買するのだから、これは実行可能なことです。これらの企業は環境と社会を保護するための最低基準を引き上げることに同意し、生産に要したすべてのコストを支払い、どの企業も競争の不利益を被ることなく、それらの基準をきちんと守るように手段を講じることができるでしょう。

「どん底へ向かう競争」を止めさせるように要求する必要がある
農産品生産者、政府、そして競合し合う企業が協力して、どん底へ向かう競争を終わらせるようになり得るのでしょうか。それはとても大きな夢であり、私たちの世界が力を合わせて今すぐできることよりもっと大きな協力関係を必要とするように思われるかもしれません。

しかしながら、それは私たちの地球の現実に根ざした夢です。私たちは、一つの小さな世界で一緒に生きている単一の種族なのです。遅かれ早かれ、この事実を受け入れざるを得なくなるでしょう。この事実をいささかなりとも過少に評価するなら、それは何もせずに傍観し、どん底へ向かう競争がその最終地点に至るのをただ待っているということを意味するのです。まだ時間のあるうちに、私たちによって権限を与えられた政府と私たちが商品を購入している企業に対して、今すぐ、どん底へ向かう競争を止めさせるように要求する必要が私たちすべてにあるのです。 .

『システム思考戦略』についてのより詳しい情報は次のサイトで
http://www.unh.edu/ipssr/Lab/playbook.html

エリザベス・サウィン は、バーモント州ハートランドに住む一母親、生物学者、システム・アナリストであり、持続可能性研究所(www.sustainer.org)で働いています。システムと持続可能性についての月間コラムを講読したい方はメールで彼女に連絡をどうぞ。アドレスはbethsawin@vermontel.netです。


エリザベス・サウィンの前回のコラム

  • 2002年10月1日: 『メキシコ湾酸欠海域の経済』 いつになったら私たちは、「健康な土」そして「清浄な水」が農業を経済的に成功するために不可欠な価値をもつ、と見なし始めるのでしょうか?

 
 


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